交通事故

自動車事故に関する法律知識

応急手当②~応急手当をおこなった場合の法的責任は?~

応急手当、
持に心肺蘇生法などの救命手当は、
傷病者の命を救うためのものです。

もしあなたが救急現場に遭遇したときには、
ためらわずに勇気をもって救命手当を実施してください。

その場合、
救命手当を試みたことにより、

法的な責任が問われることはないのでしょうか??

人の脳は3~4分間の血流停止で回復が困難、
心臓停止の場合、3分後に50パーセントの人が死亡、
呼吸停止の場合、10分後に50パーセントの人が死亡すると言われています。

負傷者に対しては、救急隊が現場に到着するまでの間、
心肺蘇生法を含む最小限必要とされる応急手当がなされたか否かが、
生命を左右することになります。
救命率を向上させるためには、
救急隊が到着する以前により早い救急蘇生法が、
その場に居合せた一般市民(バイスタンダー)の手で行われることが最も重要です。
しかし、バイスタンダーによる応急手当については、
その重要性はよく理解されているにもかかわらず、
実際に実施される例はとても少ないのが現状です。
その主な原因として考えられるのが
他人の身体に触れ、
何らかの応急手当を施したことで、
責任の発生への懸念が考えられます。
一般に、
実際に法的責任が問われることが
あるのかどうかを
詳しく説明していきます。

米国の各州には「善きサマリア人法」という法律があり、
緊急時に市民が進んで勇気を持って善意から行った行為については、
法的な責任は問われないこととされています。

Good Samaritan Law
 アメリカには「善きサマリア人法」(グッド・サマリタンロー)と一般に総称される法律があり、1959年のカリフォルニア州法の制定に始まり、1987年までにすべての州で同種の法律が制定された。内容は州によりかなり異なるが、基本的には善意で救命手当等の救助行為にでた者について、その行為に過失があっても責任を免除しようとする内容を含んでいる。
 「善きサマリア人法」の名称の由来は、福音書第10章の次の挿話にあるとされる。強盗に襲われた人が半死半生で倒れていた時、通りかかった祭司さえもが何もしなかったのに、サマリア人だけが彼を助けて介抱し、宿屋に運んでその宿代まで払ったというものであり、傷ついた人を救助しようとした時、その行為が無謀なものでない限り、過失責任を問われないという1つの原則(グッド・サマリタン主義)を説明するものとして引用される。

(参考;総務庁長官官房交通安全対策室『交通事故現場における市民による応急手当促進方策委員会報告書』:平成6年3月)。


救命手当の実施義務はあるのか?

交通事故により被災者が心停止等の状況にある現場に遭遇した時、居合わせた一般市民が、何ら救助の手立てをとることなく、傍観者の立場にあることは、状況によって非難されるべきであるかもしれない。
その意味では、少なくとも、道義的には一般市民にとっても、救命手当の義務があるといえる。
しかし、現行法にあっては、一般市民に救命手当の法的な義務があるとは言えない。


民事関係の責任について?

救命手当は、基本的には法的に義務のない第三者が他人に対して心肺蘇生法等を実施する関係であることか、民法第3編第3章「事務管理」(第697条~702条)に該当する(従って、不法行為責任は発生しない)。
また、特に被災者の身体に対する「急迫の危害」をのがれさせるために実施する関係であることから、第698条の「緊急事務管理」になると考えられる。
従って、法律的には悪意または重過失がなければ救命手当の実施者が被災者等から責任を問われることはない。

重過失とは、失火責任に関してではあるが「通常人に要求される程度の相当の注意をしなくても、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見すごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」(最高裁昭和32年7月9日判決民集11巻7号1203頁)とされているため、実際上、善意で実施した救命手当の結果について民事的に責任を問われることは、まずないと考えられる。

刑事関係の責任について?

一般人が行う救命手当は、一般的に社会的相当行為として違法性が阻却されると思われるが、一般人の救命手当に過失が認められる場合には、医師の治療行為に過失が認められる時に業務上過失致死傷罪が成立し得るのと同様に、過失傷害罪、過失致死罪、重過失致死罪が成立し得る。
ところで、過失の有無は個々の具体的事例に応じて判断されるところから、救命手当実施者に要求される注意義務が尽くされていれば、過失犯は成立しない。
またその注意義務の程度は、医師に要求される注意義務のそれより低いものであろう。


わが国では、

応急手当について直接に定めた法律はありませんが、
一般市民が善意で実施した応急手当については、

悪意や重大な落ち度がなければ、
その結果の責任を法的に問われることはないと考えられています。



事実、わが国においては、
現在まで救命手当を行うことによって法的責任を問われた事例はありません。
もしあなたが救急現場に遭遇したときには、
ためらわずに勇気をもって救命手当を実施してください。

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